スピード感を持って日々変化していく再生可能エネルギー市場。レラテックニュースでは、再生可能エネルギー関連や風力発電市場についての直近のニュースのなかで、レラテックメンバーが気になったニュースをピックアップしてお届けします。今回は10月中旬から11月中旬までに特に注目したニュースについてです。
①中国のRETECが中国河北省張北県の風力評価プロジェクトにおいて、220mの高高度マストを設置
https://wind.in-en.com/html/wind-2454035.shtml
(原文が中国語のため、Google translateなどで翻訳してご覧ください)
中国で220mの高高度風況マストが建設されたそうです。風車の大型化や沖合の洋上風況観測手法の確立が急がれる中、鉛直ライダーなどを検証するために、このような高高度風況マストの導入は必須と考えられます。日本においても最低1か所は高高度マストを設置し、誰もが試験できる環境を作っていく必要性を強く感じます。
②英BP、洋上風力事業の少数権益売却を模索 再エネ縮小の一環
https://jp.reuters.com/markets/commodities/E62V2OSPRNOT3J3K62JVP6BCUM-2024-10-18
英石油大手BPは、再生可能エネルギー事業で利益が減少していることから同事業の縮小を図る中で、洋上風力発電事業の一部権益売却を検討しているとのこと。収益性と企業理念のバランスは難しいですね。結局のところ、投資判断では収益性が重視される中、風力業界がどのように価値を上げ、収益性をあげていくかについては世界全体の課題となりそうです。
③超高層ビル屋上で風力発電 サボニウス式風車活用で国内
https://forbesjapan.com/articles/detail/74577
大成建設とチャレナジーが、三井不動産の協力のもと、超高層ビル屋上で国内初の風力発電の実証実験を開始しました。高層ビルの上は風況も良さそうな上、ビルの消費電力がプラマイゼロになるまで風力で自家発電できるようになったら素晴らしいなと思います。都市部ではなかなかプロペラ式風車の設置は難しそうなため、新たな風力発電技術に期待です。発電環境の多くが地方に偏っている中、電力をたくさん使う都心部に少しでも発電する場が設けられるようになるといいですね。
④「ダブルドーナツ・スパー型浮体式風力発電システムの研究開発」を産学4者が共同提案し、採択
https://www.kumagaigumi.co.jp/news/2024/pr-20240913-1.html
ダブルドーナツ・スパー型浮体式風力発電システムは、従来のスパー型浮体基礎の安定性を保持しつつ、浅い水深で製造・組立が可能な設計です。これにより、他の浮体形式の利点を取り入れつつ欠点を克服し、効率的な風力発電が可能になります。ワイヤーが多いため、メンテナンスが大変そうな一方、データ収集においては従来と比べて容易になりそうな浮体形式だと感じます。
⑤長崎にて国内最大の洋上風力人材育成センターが開所
https://www.nippon-foundation.or.jp/who/news/information/2024/20241107-105723.html
日本財団とNPO法人の長崎海洋産業クラスター形成推進協議会が、長崎港沖合の伊王島にて洋上風力人材育成センターを開設しました。洋上風力発電設備の設置や運転・メンテナンスのための高所作業、安全対策の訓練ができる国内最大規模の施設で、国際認証資格が取得可能です。この施設では、年間約1,000人の洋上風力発電技術者を育成する計画が進められています。将来的に訓練用の洋上プラットフォームも作るようで、今後、研究目的としての洋上風況観測施設としても使用できるのではと思案していました。
⑥アマゾンが原発開発に関わる企業に750億円投資 AI拡大で電力確保の動き
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241017/k10014611641000.html
記事によると、アメリカのIT大手のアマゾンは、生成AIの普及に伴う電力消費の急増を見込み、次世代原発「小型モジュール炉(SMR)」を活用するそうです。再生可能エネルギーのように非化石燃料の一つとして原子力を含めるかは議論の分かれるところですが、影響力のある大企業の選択として注目されそうです。
⑦中国、政府および国家エネルギー局など中央6部門が、従来の化石燃料から再生可能エネルギーへの切り替えを促す指導意見を発表
https://news.yahoo.co.jp/articles/ebffe30819f6aec55aeb21b45ccd12a7ee3a19c7
中国の国家エネルギー局によると、今年1月から9月に全国で新設された再生可能エネルギーの発電設備容量は2億1,000万キロワットで、新設全体の86%を占め、風力・太陽光は合わせて2億キロワット以上を占めるそうです。最近の中国の動向から、これからも既存の技術の大型化を図ってきそうな印象を受けます。日本においても迅速な開発導入の必然性を改めて実感しました。
⑧第7次エネルギー基本計画、年内に骨子案を固める 脱炭素電源の構成比率が焦点
https://windjournal.jp/121421/
日本政府は、脱炭素社会の実現に向けて第7次エネルギー基本計画の議論を進め、2040年を目標として再生可能エネルギーや原子力の比率を設定する予定です。生成AIの普及やデータセンターの市場規模拡大による電力需要増に対応しながら温室効果ガス削減を目指す一方、電力の安定供給の両立が課題となっています。今後の動向に注目です。
次回もレラテックが気になったニュースを厳選してお届けしていきます。
レラテックでは風況コンサルタントとして、風力発電のための「観測」と「推定」を複合的に用いた、最適な風況調査を実施いたします。