スピード感を持って日々変化していく再生可能エネルギー市場。レラテックニュースでは、再生可能エネルギー関連や風力発電市場についてのニュースのなかで、レラテックメンバーが気になったニュースをピックアップしてお届けします。今回は12月から1月までに特に注目したニュースについてです。
①唐津・洋上風力発電の影響調査報告会「魚礁効果」で期待の声も
https://www.sagatv.co.jp/news/archives/2024121318544
2024年12月12日、佐賀県唐津市沖に県が誘致している洋上風力発電について、地元漁業者向けに海の調査結果が報告されました。現在唐津沖では海水温の上昇に伴い海藻が大きく減少する「磯焼け」が確認されています。一方で、すでに洋上風力発電が導入されている秋田県などでは、設備の土台が「魚礁」となり、魚が多く集まっているとのこと。洋上風力発電の社会実装には地元住民の方との相互理解がとても重要です。漁業関係者にとって良い影響が注目を浴びることは、この先日本における洋上風力発電を促進するに当たり、希望が湧く出来事です。
②世界最大規模の浮体式洋上風力発電プラットフォーム 中国広東で稼働開始
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02406/121600031
中国南部の広東省陽江にて、浮体式洋上風力発電プラットフォーム「明陽天成号」が12月11日から正式に稼働しました。この明陽天成号の開発は、明陽風力発電集団が独自に行い、世界で初めて1台の浮体式ベース上に8.3メガワットの海上ファン(風車)2基を搭載した、総設備容量が16.6メガワットに及ぶ、現状世界最大の浮体式洋上風力発電プラットフォームとなっています。ここで採用されているデュアルタービンは、2つのタービンがそれぞれ逆回転することで約4%発電量が増加するとのこと。また、この設置海域では猛烈な台風の襲来が想定されることから、これらの設備の耐久性などを含めて実証試験をすると考えられ、非常に意欲的なプロジェクトと言えそうです。
③今ノ山風力発電事業、四電など3社が撤退 事業会社は継続の意思
https://www.asahi.com/articles/ASSDD462LSDDPLXB00CM.html
四国電力は、高知県西部・今ノ山で進めていた陸上風力発電事業からの撤退を決定しました。計画では、国内最大級の19万3千キロワットの発電容量を見込み、2024年の着工を予定していましたが、風況解析の結果、想定より発電量が3割低下する見込みとなったほか、資機材価格の高騰や工期の長期化も重なり、事業継続が困難と判断されました。四国電力の他に出資していた住友商事と北拓も撤退を決定。現在、残り1つとなった出資者のジャパンウィンドエンジニアリングのみが事業継続の意向を示しています。
風況解析では、渦を巻くように風が吹く「乱流」の影響が大きく、風が安定せず、想定していた発電量より少なくなることが判明したとのことで、事前の風況調査の重要性を実感します。
④ClassNK、来年2月に長崎海洋アカデミーと洋上風力の共催講座
https://www.kaijipress.com/news/information/2024/12/189283
一般財団法人日本海事協会(ClassNK)が、洋上風力発電に関する人材育成機関・長崎海洋アカデミー(Nagasaki Ocean Academy;NOA)との共催で、ClassNKアカデミー「洋上風力発電の基礎講座 ~洋上風力産業の可能性と海事産業へのインパクト~」コースを2025年2月17日、18日に東京にて開催します。洋上風力発電においては、メンテナンスも含めた技術者の育成が今後の業界発展の鍵です。NOAの「風況海象観測・解析と発電量予測コース」においては、神戸大学やレラテックが講師として参加しており、このようなコースが風力分野における人材育成の一助になることを期待しています。
⑤第7次エネルギー基本計画の原案を発表
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC17B800X10C25A1000000
政府は2024年12月17日に、第7次エネルギー基本計画の原案を公表しました。2011年の東京電力福島第一原子力発電所での事故以降、盛り込まれてきた「原子力依存度を可能な限り低減する」との文言を初めて削除し、原発の建て替えにも言及しています。再生可能エネルギー全体の中で風力発電の占める割合は、2023年度の実績としては1.1%だったのに対し、2040年度の見通しとしては4〜8%と示されています。この政策により今後風力業界にも大きな影響が与えられることが予想されます。
⑥浮体式洋上風力発電導入促進における理的な建設システムの確立に向け、浮体式洋上風力建設システム技術研究組合(FLOWCON)を認可
https://www.mlit.go.jp/report/press/port01_hh_000286.html
国土交通省により、浮体式洋上風力発電の大量急速施工や合理的な建設コストを実現するための建設システムの確立を目的とした「浮体式洋上風力建設システム技術研究組合(FLOWCON)」の設立が認可されました。これは、浮体式洋上風力発電の基盤となるテーマを対象に共同研究・技術開発をしているFLOWRAとは異なり、施工面に特化された組合です。特に海上施工に関わる気象海象予測システムの開発 【WG3】が風況分野に関連する項目となっています。
⑦伊藤忠商事、米国ボウマン風力発電所へ出資 10万世帯分の再生可能エネルギーを供給
https://www.itochu.co.jp/ja/news/press/2025/250127.html
伊藤忠商事は、再生可能エネルギーの米国開発企業であるApex Clean Energyと提携し、ノースダコタ州で建設中のボウマン風力発電所(208MW)への出資を決定しました。本プロジェクトは、大学や公共機関など8者とコーポレートPPAを締結し、2025年末の商業運転開始、約10万世帯分の電力供給を予定しています。この地域の気候は、風力発電には適していそうだと考えられるため、今後の動向に着目していきたいです。
⑧デンマーク・オーステッド、米国で2600億円の減損計上
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-01-21/SQF3TDT1UM0W00
世界最大級の洋上風力発電事業者であるデンマークのオーステッドは、2024年10~12月期に約2600億円の減損費用を計上したと発表しました。主な要因は、米国での発電施設建設コストの高騰や金利上昇、ニューヨーク沖サンライズ風力発電プロジェクトのコスト増加が挙げられます。さらに、トランプ米大統領が大規模風力発電向けの連邦政府管理地の貸与停止を表明したことにより、新規開発が困難になる可能性も指摘されています。
次回もレラテックが気になったニュースを厳選してお届けしていきます。
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レラテックでは風況コンサルタントとして、風力発電のための「観測」と「推定」を複合的に用いた、最適な風況調査を実施いたします。