レラテック株式会社(本社:兵庫県神戸市、代表取締役:小長谷瑞木、以下「レラテック」)は、「世界の洋上風力導入量の推移」および「日本の洋上風力と風況観測の発展」について可視化したインフォグラフィックを公開いたしました。

インフォグラフィック公開の背景

当社は神戸大学発ベンチャーとして、神戸大学における研究成果を活かし、風力発電プロジェクトが検討されている地域において、当該プロジェクトの経済性および安全性の検討・確認に向けた風況観測、データ解析、発電量予測等を実施しています。

近年の洋上風力市場の高まりは認識されているものの、グローバル市場における日本の洋上風力の導入量や導入進度、その背景にある風況観測の進化について可視化された資料は限られています。そこで本分野での日本および各国における取り組みやデータ、歴史等をふまえてそれらを可視化することにより、日本の洋上風力発電のさらなる発展と風況観測への理解促進を目指し、本インフォグラフィックを公開いたします。

各国で急成長、日本の成長率は緩やか

世界の洋上風力導入量の推移は、2010年頃と比較すると2030年までに約100倍の規模で急成長することが予測されています。洋上風力発電の歴史をリードしてきた欧州諸国は、2010年の年間導入量2.9GW(ギガワット)に対し、2030年には約45倍の130GWまで拡大すると予測されています。2020年以降に洋上風車の新規設置数が急増した中国では、2010年の年間導入量0.1GWに対し、2030年には1400倍の140GWまで成長する見込みです。

日本より遅れて洋上風力発電を導入した国においても、近年急速に発展しています。例えば、2020年時点の年間導入量がほぼゼロだったアメリカ合衆国は、2030年までには25GWまで拡大すると予測されています。また、日本と比較して人口も少なく、国の面積も小さい台湾においては、2020年の年間導入量0.13GWに対し、2030年は日本の値を大きく上回る12GWと予測されています。

世界の洋上風力発電の導入量がこのように急成長し、今後、著しい発展が見込まれるなか、日本の導入量の成長スピードは世界と比較すると緩やかで、これから期待されるフェーズであることが分かります。

今後に期待が高まる日本の洋上風力の拡大

2004年、北海道のせたな町と山形県の酒田市において、日本で最初の洋上風車が設置されました。2010年以降は、茨城県神栖市、長崎県五島市、千葉県銚子市、福岡県北九州市、福島県沖などで設置が続きました。さらにこの1年ほどで、一般海域における富山県入善沖のほか、港湾区域における秋田県秋田港・能代港、さらには北海道石狩湾新港で大型風車が設置され、現状における国内最大規模の洋上風力発電所として稼働しています。加えて、2025年以降は、長崎県五島市、茨城県神栖市での増設に続き、再エネ海域利用法に基づき、洋上風力第1ラウンドの秋田県能代市・三種町・男鹿市沖、秋田県由利本荘市沖、千葉県銚子市沖の3海域(約1,690MW、134基)、および第2ラウンドの秋田県男鹿市・潟上市・秋田市沖、秋田県八峰町・能代市沖、新潟県村上市・胎内市沖、長崎県西海市江島沖の4海域(約1,790MW、112基)の運用開始が予定されています。なお、本インフォグラフィックには、2024年3月に選定事業者の決定が公表された第2ラウンドの秋田県八峰町・能代市沖の情報までが含まれています。

時代とともに進化を遂げる風況観測の技術

日本でも洋上風力発電への関心が高まり、近年市場が飛躍的に成長を遂げていますが、その背後には風況観測技術の進化が欠かせません。陸上風力発電でも使われている上空の風況を直接観測する陸上風況マストから、上空にレーザーを照射することによって風況マストでは届かない高高度の風(上空300mまで)を測定する鉛直ライダー、陸上から洋上に向けてレーザーを照射して測定するスキャニングライダー、沖合の大水深海域でも適用できるフローティングライダーシステムなど、リモートセンシング機器を利用する間接観測へとシフトしてきました。洋上風車においても、間接観測の発展とともに、沿岸付近の着床式から沖合の浮体式へと拡大していくことが想定されます。

このように、近年では洋上風力発電のための新しい風況観測手法の開発や導入が進んでいることが分かります。新しい風況観測手法の導入は、風況調査の高精度化のみならず低コスト化に貢献し、洋上風力発電市場の成長を支えていくことになります。しかし、新しい風況観測手法(ライダー)が導入される一方で、このような風況観測機器を検証する試験サイトが国内に存在しませんでした。レラテックは2023年度よりNEDO事業を通じて、神戸大学・日本気象協会と共に国内初の洋上風況観測試験サイトの構築に取り組み、運用を開始しています。