地表面粗度区分とは、地表面の滑らかな状態から粗い状態までを段階的に区分したものです1。地表面に建築物や樹木等の障害物が多いほど、風速は低くなるため、風車などの建築物に作用する風圧力も小さくなります。建築基準法の構造計算にあたっては、地表面の障害物の影響を考慮するため、地表面の粗さを4段階(Ⅰ~Ⅳ)に区分し、各区分に対応した一定の補正係数を乗じて、風圧力を算定しています(図1参照)。
図1 地表面粗度区分による地形イメージ(上)2と、各粗度区分における平均風速の高度補正係数(左下)と平坦地形上の乱流強度(右下)3
その地表面粗度区分の定義が、建築基準法の改正により、2022年1月に変更されました(表1参照)。
表1 地表面粗度区分の新しい定義4
この変更について、「風圧力を算定する基準(地表面粗度区分)の合理化」5に概要がまとめられています(図2参照)。
- 都市計画区域以外で異なっていた地表面粗度区分の考え方を統一する
- 都市計画区域内外に関わらず、特定行政庁が規則で地表面粗度区分Ⅰ、Ⅱ及びⅣの区域を定めることを可能とする。
図2 「風圧力を算定する基準(地表面粗度区分)の合理化」における改正の概要5
風力開発では、ウィンドファーム認証のサイト条件評価の中で使用する気流解析モデルの計算条件として、地表面粗度区分を設定することが求められています1。上記を踏まえると、例えば、これまでの地表面粗度区分がⅡと判断されていた風力開発エリアが、新しい定義によれば、Ⅲと判断されるケースもでてくることが予想されます。なお、2022年9月現在、上記について、工事計画届やウィンドファーム認証における取り扱いは公表されていません。しかしながら、ウィンドファーム認証のプロセスの中で、以前の地表面粗度区分に従って気流解析モデルによるシミュレーションを実施している場合には、新しい地表面粗度区分でシミュレーションした場合とで結果が乖離する可能性があるため、注意が必要となります。具体的には、風車位置の極値風速(50年再現・10分間平均風速)や、暴風時における乱流強度の算定方法に関わるものとなります。
風車位置のハブ高さにおける再現期間50年の10分間平均風速Uhは、基準風速V0に地形による平均風速の割増係数EtVと高度補正係数EpVを乗じたものとして、次式により算出されます。
また、風車位置の暴風時における乱流強度の主風向成分Ih1は、平坦地形上の乱流強度Ipに地形による乱流強度の補正係数EtIを乗じたものとして、次式により算出されます。
ここで、V0は、建築基準法により、その地方の過去の台風等の記録に基づく風害の程度その他の風の性状に応じて30m/sから46m/sまでの範囲において国土交通大臣が定める高さ10mにおける再現期間50年の10分間平均風速1であり、EtVとEtIは、一般的に、気流解析モデルを用いて算出されます。EpVとIpは、地表面粗度区分に応じて次式と表2により算定されます。
表2 平均風速の高度補正係数を定めるためのパラメータ1
地表面粗度区分を変更して極値風速や暴風時の乱流強度を計算した場合、その結果が粗度区分の変更前と比べて、設計上、安全側になるのか、危険側になるのかはサイト条件によって異なります。
技術的な内容等ご不明点があれば、RTIへお気軽にお問い合わせください。
Reference
- 一般財団法人 日本海事協会, ウィンドファーム認証 陸上風力発電所編 (NKRE-GL-WFC01, Edition: July 2021)
- 日本建築学会, 建築物荷重指針・同解説(2015)
- 土木学会, 風力発電設備支持物構造設計指針・同解説[2010年版]
- 国土交通省, Eの数値を算出する方法並びにV0及び風力係数の数値を定める件の一部を改正する件(令和2年国土交通省告示第1437号), URL: https://www.mlit.go.jp/common/001381085.pdf
- 国土交通省, 風圧力を算定する基準(地表面粗度区分)の合理化(平成12年建設省告示第1454号), URL: https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/H12-1454.pdf