<評価方法>

日本国内において風力発電所を建設する際には、地形に起因する風の乱れに耐えられるような風車を設計する必要があります。

国内のウィンドファーム認証(以下、WF認証)の要求事項をまとめた、一般財団法人 日本海事協会の「ウィンドファーム認証 陸上風力発電所編 (NKRE-GL-WFC01, Edition: July 2021)」(以下、NKガイドライン)では、開発サイトが、風の乱れが大きい複雑地形に該当するか否かを適切に評価することが要求されています。その指標となるのが、国際規格「IEC61400-1 Ed.4.0: 2019」に示された、TSI(Terrain Slope Index;地形勾配指数)とTVI(Terrain Variation Index;地形変動指数)、および、これら指数を用いて得られるCct(Turbulence structure correction parameter;乱流構造補正パラメータ)です。

TSITVIは、対象となる地点を中心とした想定風車ハブ高さの5, 10, 20倍の半径を取るそれぞれの円について、全方位と30°幅の風向セクター毎の標高値に基づいて算出される指数です。表1は、TSITVIに基づく地形複雑性の判別基準です。すべてのTSIが10°未満、TVIが2%未満であれば「平坦地形」、それ以外は「複雑地形」と判定されます。このうち複雑地形については、基準値に従って地形複雑性が低、中、高の3つのカテゴリーに分類されます。Cctは、表2に示すように、これらのカテゴリーに応じて1.00から1.15までの値を取ります。

NKガイドラインでは、Cctの値に応じて、観測サイトの代表半径、気流解析モデルの種類とその風向セクター数を設定するように示されています(表3)。

表1:TSIとTVIに基づく地形複雑性の判別基準

表2:地形複雑性との関係

表3:Cctに基づく代表半径・気流モデルの設定基準

<弊社サービス>

弊社では、NKガイドラインに従い、Cctを用いた地形複雑性評価に基づき、気流モデルの選定や観測値の代表半径の判別を行います。さらに下記に示すように、風力開発のフェーズ毎に目的を設定し、最適な意思決定をサポートいたします。

地形複雑性評価に必要となる風況データについては、机上検討から風況マスト設置までのフェーズでは近隣のアメダスデータや気象機関が配信するGPV(Grid Point Value; 格子点値)データを、それ以降のWF認証のフェーズではNKガイドラインに準拠する風況観測データおよびシミュレーション結果を使用します。

  1. 机上検討
    風車候補地の地形複雑性から、地形による乱流のリスクなどを簡易的に評価します。
  2. 風況マスト設置
    風況マスト建設予定地の地形複雑性を算出し、代表半径の判別や、併設する鉛直型ドップラーライダー観測の精度低下リスクについて評価します。
    近年、CFDモデルでの気流再現が困難な複雑地形における風況マスト建設が増加しており、気流解析の妥当性や十分な精度を示すことが難しいサイトが散見されます。本フェーズにおいて地形複雑性を評価し、適切な場所に風況マストを設置することで、発電量評価や設計(WF認証)における計算精度の向上が期待できます。
  3. WF認証
    WF認証および工事計画届の要求事項を踏まえて、地形複雑性の評価をより厳密に行います。

任意サイトにおけるTSITVIの計算例

Cct計算結果例

Reference

  1. 一般財団法人 日本海事協会, ウィンドファーム認証 陸上風力発電所編
    (NKRE-GL-WFC01, Edition: July 2021)
  2. International electrotechnical commission, IEC61400-1:2019 Wind energy generation systems. Part 1: Design requirements., Edition 4.0