本稿は、2025年11月に開催された第47回風力エネルギー利用シンポジウムにて発表された「陸上風力発電所における風況観測のサイト代表性に関するケーススタディ」の一部を再編集したものです。
はじめに
風況調査における「サイト代表性」とは、観測地点の風況が風車設置位置の風況をどの程度正確に表しているかを示す概念です。Landbergらの類似性原則1)によると、風況や地形、気象条件の類似度が高いほど、空間外挿の信頼性が向上します。つまり、サイト代表性の高い地点のデータは、発電量評価の精度向上に直結します。 複数の風況データが利用できる場合、どのデータを組み合わせるべきかは課題です。従来は距離が最も近い観測地点を選ぶ「距離最小法」が一般的でしたが、Bechmannら2)は、類似度を定量化した「最類似法」を提案しました。本研究では、国内陸上風力発電所を対象に、サイト代表性と観測データの組み合わせについて検討しました。
データと手法
本研究では、青森県のユーラス岩屋・尻労・北野沢風力発電所(複雑地形、図1)を対象に、風況観測マストMAST-A(高さ58m、2021年観測)とMAST-B(高さ67m、2019年観測)で取得した10分間平均の風向・風速データを解析しました。 観測地点と風車位置の類似度評価には、Bechmannらの指標である方位別平均スピードアップの不確かさσₛを用いました。σₛは、観測地点と風車位置の距離(以下、外挿距離)と風速差に起因する不確かさを総合的に評価し、値が小さいほど風況が類似していることを示します。スピードアップ比の算出には、工学モデルMeteodyn WT3)による気流解析結果を使用しました(表1)。



表1 Meteodyn WTの計算条件
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 標高データ | 国土地理院 – 基盤地図情報(10m) |
| 粗度長データ | Copernicus – Land Cover 2019 (100m) |
| 計算半径 | 5,000m |
| 中心緯度経度 | 北緯41.381191°東経141.422371° |
| 計算対象方位数 | 16 |
| 水平方向の最小メッシュ | 25m |
| 水平方向の伸縮比 | 1.15 |
| 鉛直方向の最小メッシュ | 5m |
結果と考察
図2は、MAST-AとMAST-Bを基準にした各風車位置(高さ68m)での𝜎ₛ分布を示しています。両結果とも、観測地点に近い風車ほど𝜎ₛが小さく、距離が離れると大きくなる傾向が見られました。一方、S-T01では周辺より大きな値を示しました。国土数値情報の10mメッシュDEMによると、この地点は窪地で地形が複雑であり、𝜎ₛは距離だけでなく地形の微細な変化も反映していることが示唆されます。
次に、表2と図3を用いて、複数の観測データが利用可能な場合に𝜎ₛを気流解析モデルの入力データ選択に応用する可能性を検討しました。ケース1・2では、風車群の中心に近いMAST-Bを用いたケース2の方が𝜎ₛの平均値・合計値が小さく、より高いサイト代表性を示しました。一方、ケース3・4では統計量に大きな差はなく、距離最小法と最類似法はほぼ同等の結果でした。この結果から、距離最小法および最類似法は、単独でデータを使用するより不確かさを低減できる可能性が示されました。


表2 各ケースにおける観測データ選択手法
| ケース | 手法 | 観測データ選択方法 |
|---|---|---|
| 1 | 単独 | MAST-Aのみ |
| 2 | 単独 | MAST-Bのみ |
| 3 | 距離最小法 | 風車位置からの距離が最小となる観測データを選択 |
| 4 | 最類似法 | 各風車位置ごとに𝜎ₛが小さい観測データを選択 |
おわりに
本研究では、国内の陸上風力発電所を対象に、𝜎ₛを用いてサイト代表性を定量化し、観測データの組み合わせ方法を検討しました。
対象サイトの風車位置における𝜎ₛを可視化したところ、マスト近傍では値が小さく、距離が増すほど、また地形が複雑になるほど大きくなる傾向が見られました。さらに、複数の観測データを組み合わせる方法として最類似法を検討した結果、距離最小法と同等の精度を示し、観測データを単独で使用する場合よりも空間外挿の不確かさを低減できる可能性が示されました。
今後は、SCADAデータなどの実測発電量と𝜎ₛの関係を検証し、サイト代表性の定量評価指標としての適用性を明らかにしていく予定です。

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参考文献
1) Landberg, L., Mortensen, N. G., Rathmann, O., Myllerup, L.(2003):「The similarity principle – on using model correctly」,EWEA会議論文集(CD-ROM).
2) Bechmann, A., León, J. P. M., Olsen, B. T., Hristov, Y. V.(2020):「The most similar predictor – on selecting measurement locations for wind resource assessment」,Wind Energy Science,Vol. 5,pp. 1679–1688.
3) Meteodyn社ウェブサイト: https://meteodyn.com/ (参照日:2025年11月11日)
4) Clerc, A., Anderson, M., Stuart, P., Habenicht, G.(2012):「A systematic method for quantifying wind flow modelling uncertainty in wind resource assessment」,Journal of Wind Engineering and Industrial Aerodynamics,Vol. 111,pp. 85–94,https://doi.org/10.1016/j.jweia.2012.08.006.